皆さん人生で一度か二度は、有機物や無機物という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
ですが、この二つが具体的にどのような分類なのか知らいないなんで人もいますよね?
実は、この世界にあるすべての「モノ」は、大きく分けると2つの仲間に分類できます。それが「有機物(ゆうきぶつ)」と「無機物(むきぶつ)」です。
日常の「なぜ?」からわかる有機物と無機物のちがい
決め手は「炭素」を含んでいるかどうか

有機物と無機物を分ける一番のポイントは、そのモノの中に「炭素(たんそ)」という成分が含まれているかどうかです。
炭素が含まれているものが「有機物」、含まれていないものが「無機物」になります。

炭素と聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、鉛筆の芯や真っ黒な炭をイメージするとわかりやすいですね。有機物を火で熱すると、水分などが抜けたあとに炭素が残るため、黒く焦げます。さらにしっかり熱し続けると、空気中の酸素と結びついて二酸化炭素になり、最後には煙となって消えていきます。
「腐る」と「腐らない」の決定的なちがい
毎日の暮らしで見られる「腐る」という現象も、有機物と無機物を見分ける大きなサインです。
食べものを放っておくと、カビが生えたり嫌なにおいがして腐ってしまいますよね。腐敗とは、目に見えない小さな微生物(細菌やカビ)が、モノを分解して自分の栄養として食べる現象のことです。微生物も生きものなので、活動するためのエネルギーとして、炭素を含むタンパク質や糖分などの「有機物」を必要とします。つまり、有機物は他の生命の栄養源になれるからこそ腐るのです。
一方で、鉄のクギやガラスのコップ、石ころ、食塩などは、放っておいても腐りません。微生物にとって生きるためのご飯にならないため、菌が繁殖して分解することができないからです。
なお、鉄が赤くサビるのは空気中の酸素や水と結びつく化学反応であり、生きものが分解する「腐る」現象とはまったく別のものです。
「有機」と「無機」という名前のふしぎな由来
なぜこのような名前がついているのでしょうか。時計の針を約200年前のヨーロッパに戻してみましょう。
昔の科学者たちは、「生命の力(生気)を持った生きものの体の中(器官)でしか作ることができない特別な物質」だと信じていました。
漢字の「機」には「生きもののからだの器官」という意味があるため、「命の器(器官)が宿るもの」という意味を込めて「有機物」と名付けられました。
これに対して、石や空気、水のように「命を持たない自然界の無生物から得られるもの」を、器官が無い物質という意味で「無機物」と呼んだのです。
ところが1828年、ドイツの化学者フリードリヒ・ヴェーラーが、研究室のフラスコの中で無機物からおしっこの成分である「尿素(有機物)」を人工的に作り出すことに成功しました。これにより「有機物は生きものしか作れない」という常識は覆され、現在の「炭素を中心とした物質」というルールに改められました。
性質やスケールのちがいを徹底くらべ!
有機物と無機物は、形作っている原子のつながり方が違うため、化学的な性質にもはっきりとした差が表れます。
| くらべるポイント | 有機物(砂糖、油、プラスチックなど) | 無機物(塩、鉄、石、水など) |
| 熱への強さ(融点・沸点) | 熱に弱い(比較的低い温度でとけたり、焦げたりする) | 熱に強い(数百℃〜千℃以上にならないととけないものが多い) |
| 電気の通りやすさ | 電気を通しにくい(絶縁体やプラスチックなど) | 電気を通しやすいものが多い(金属や、水にとけた食塩など) |
| 水へのとけやすさ | 水にとけにくく、油にとけやすいものが多い | 水によく溶ける塩類や、全く溶けない石や金属などさまざま |
有機物は分子同士が引き合う力が弱いため熱に弱く、加熱すると形が崩れて焦げたり煙になったりします。一方、無機物はプラスとマイナスの電気の力や金属の強い力でがっちりと結びついているため、非常に高い温度に耐えられます。
世界にはどっちがありふれている?
「有機物と無機物、この世界にはどっちがたくさんあるの?」と聞かれたら、実は比べ方によって答えがガラリと変わります。
- 「種類の数」で比べるなら:有機物の圧倒的勝利!
地球上で見つかっている数千万種類以上の物質のうち、なんと90%以上が有機物です。炭素はレゴブロックのように自由自在に手をつなぎ合わせることができるため、ほぼ無限のバリエーションを作り出せるからです。 - 「地球全体の重さ」で比べるなら:無機物の圧倒的勝利!
地球全体を見渡すと、マントルや中心の核、岩石、海など、星の大部分はすべて無機物でできています。地球上のすべての生きものやプラスチックなどの有機物を全部集めても、地球全体の重さの0.01%にも届きません。
迷いやすいモノたち!これってどっちの仲間?
「焦げない」けれど有機物なもの
「有機物は焦げる」と覚えると、少し迷ってしまう例外もあります。たとえばエタノール(消毒用アルコール)です。
エタノールは炭素を含んでいるため、れっきとした有機物です。しかし火を近づけると青い炎を出してきれいに燃え、二酸化炭素と水になって消えてしまいます。黒い炭を残さずに燃え尽きてしまうため焦げませんが、立派な有機物の仲間です。
「炭素がある」けれど無機物なもの
基本的には「炭素を含む=有機物」ですが、理科のルールでは例外もあります。
炭素そのものである「黒鉛(鉛筆の芯)」や「ダイヤモンド」、そして吐き出す息に含まれる「二酸化炭素」や「一酸化炭素」などは、炭素を含んでいますが無機物として扱われます。
「えっ、炭素があるのになんで?」と思いますよね。これらは非常に単純な作りをしていて、昔から知られている鉱物や気体と同じような性質を持っているため、便宜上「無機物」のグループに分類するというお約束になっています。
もう少し詳しく知りたい人へ!専門的な科学の世界
ここまでの話で「もっと奥まで知りたい!」とワクワクした方へ、少し専門的な入り口を案内します。
炭素原子(C)は、他の原子と手をつなぐための「結合の手」を4本持っています。この手が前後左右に立体的に伸びることで、鎖のようにどこまでも長くつながったり、輪っか(ベンゼン環など)を作ったりして、複雑で多様な形を作り出します。
高校の化学では、これを「有機化学」や「炭素の共有結合」という分野で本格的に学びます。興味が湧いた人は、ぜひ図書館やインターネットで以下のキーワードを調べてみてくださいね。
- 炭素の結合手(4本の腕と立体構造)
- ヴェーラーによる尿素の合成
- 分子結晶とイオン結晶のちがい
まとめ
生命の栄養になり焦げて煙になるものが「有機物」、熱に強く地球の骨組みを作っているものが「無機物」です。
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参照元
- 文部科学省 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/ri.htm
- 啓林館 中学校理科 教科書解説資料(物質のすがた:有機物と無機物)https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/chu/science/
- 日本化学会 化学教育ジャーナルhttps://www.chemistry.or.jp/

