理科の実験室や病院で、ずらりと並んだ茶色や透明のガラス瓶を見かけたことはありませんか。
「かっこいいけどなんで割れやすいガラスを使うんだろう?」と不思議に思ったことがある人も多いはずです。
実は、ガラスには他の材料には真似できない、薬や薬品を守るためのすごい力が隠されています。今回は、身近な入れ物の謎を一緒に解き明かしていきましょう。
ガラスが選ばれ続ける理由
薬品の容器にガラスが選ばれる要因は、
・化学的安定性
・ガスバリア性

にあります
薬品に溶かされない強さ(化学的な安定性)
プラスチックのお弁当箱に油っぽいものを入れたり、消毒用アルコールを特定のプラスチック容器に入れたりしたとき、容器が白く濁ったり変形したりした経験はありませんか。プラスチックの多くは、石油などを原料にして人工的に作られた有機物です。そのため、油を溶かす性質がある薬品や強い酸、アルカリなどに触れると、プラスチック自体が溶けてしまったり、ボロボロになったりすることがあります。
一方で、ガラスの主な原料は「ケイ砂(石英)」という天然の砂で、無機物と呼ばれる仲間です。ガラスは非常に安定した結びつきを持っているため、ほとんどの薬品と化学反応を起こしません。強い酸を入れても、薬品がガラスを溶かしてしまう心配がないため、中に入っている薬品の性質をそのまま保ち続けることができます。
気体やにおいを通さない密封力(ガスバリア性)
プラスチックは一見すると隙間がないように見えますが、分子という目に見えない非常に小さな粒のレベルで見ると、網の目のようになっていて、わずかに隙間があります。そのため、長い時間をかけて空気中の酸素や水分が入り込んだり、中の薬品の成分やにおいが外に漏れ出たりしてしまいます。
これに対して、ガラスは分子が隙間なくぎっしりと並んでいます。空気中の酸素や水蒸気をまったく通さないため、空気中の成分と反応して変質しやすいデリケートな薬品を長期間保管するのにぴったりです。
容器の成分が薬品に溶け出さない(溶出の少なさ)
プラスチック製品を作るときには、形を整えやすくしたり柔らかくしたりするために、さまざまな添加剤が使われることがあります。薬品を長期間入れておくと、そうしたプラスチックの成分が薬品の中に溶け出してしまう(これを「溶出」と呼びます)危険があります。特に注射薬や精密な実験に使う薬品では、わずかな不純物が混ざるだけでも大きな問題になります。
ガラスは純度が高く、中身を汚してしまう心配が極めて少ないため、安心して使うことができます。
茶色いガラス瓶の秘密(遮光性)

理科室や薬局で見かけるガラス瓶には、透明なものだけでなく、濃い茶色(褐色)のものもたくさんあります。これはおしゃれで色をつけているわけではありません。薬品の中には、光(特にエネルギーの強い紫外線)を浴びると壊れたり、別の物質に変化してしまったりするものがあります。茶色のガラスは、この有害な紫外線をカットする働きを持っています。光から薬品を守り、できたての効き目を保つための工夫です。
もっと知りたい人向けの専門解説
ガラスとプラスチックの性質の違いや、ガラスが薬品に強い仕組みについてもっと深掘りしてみたい人向けに、調べるヒントとなるキーワードを紹介します。自主学習や自由研究のテーマとして、ぜひ図書室や科学館で調べてみてください。
調べてみよう1:二酸化ケイ素(SiO2)の網目構造
ガラスの主成分である「二酸化ケイ素(シリカ)」は、ケイ素原子と酸素原子が強力な共有結合で結びつき、規則正しい網目のようなネットワークを作っています。この強い結合が、なぜ薬品に反応しにくい安定性を生み出しているのか、分子構造の視点から調べてみると面白い発見があります。
調べてみよう2:ホウケイ酸ガラス(耐熱ガラス)
理科室のビーカーやフラスコ、薬品瓶の多くには「ホウケイ酸ガラス」という特殊なガラスが使われています。一般的な窓ガラス(ソーダ石灰ガラス)に比べて熱膨張率が低く、急な温度変化にも強い性質を持っています。成分の違い(酸化ホウ素の添加など)を比較してみましょう。
調べてみよう3:ガラスを溶かす例外の薬品「フッ化水素酸」
「ほとんどの薬品に溶けない」ガラスですが、実はガラスを溶かしてしまう例外的な薬品が存在します。それが「フッ化水素酸」です。なぜフッ素化合物だけがガラスの網目構造を壊してしまうのか、その化学反応の仕組みや、ガラスを溶かさないためにフッ化水素酸がどのような容器(テフロンなど)に保存されているのかを調べてみてください。
まとめ
ガラスが薬品の保管に使われるのは、薬品に溶かされず、空気を通さず、中身を清潔に守り抜く特別な強さを持っているからです。
おすすめ記事
参照元
- 日本硝子製品工業会(ガラスの特徴と物性について)
https://www.glassman.or.jp/ - 日本薬学会(医薬品容器の規格と試験法について)
https://www.pharm.or.jp/ - 経済産業省(化学物質の安全管理および容器包装に関する基準)
https://www.meti.go.jp/
