キミが信じる「1秒」は本当に正しいのか?
私たちは当たり前のように「1秒」という長さを使っていますよね。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。目の前にある「りんごが1個」なら、手で触ることもできるし、誰が見ても確かにそこに存在していますが、「1秒」というものは目に見えませんし、手でつかむこともできません。
それなのに、私たちはなぜか全員が同じ「1秒」を信じて暮らしています。よく考えると、これってとても不思議ではありませんか?
極端な話をすれば、「いまの0.7秒ぶんの長さ」を「今日からこれが1秒です!」とみんなで決めてしまったって、ルール上は別に構わなかったはずです。どこからどこまでを切り取るかなんて、本来は人間が勝手に決めた境界線にすぎないのですから。
時計の針が刻むカチッという音。当たり前のように流れているあの長さは、一体だれが、どうやって決めたのでしょうか。私たちの暮らしを支える「1秒」に隠された、驚きの物語を一緒にのぞいてみましょう。
そもそも「1秒」ってどうやって生まれたの?
目に見えない「時間」をなんとか形にしようと、大昔の人たちはたくさんの知恵と工夫を重ねてきました。
太陽の動きから生まれた昔の1秒
時計がなかった大昔、人々は空を見上げて時間を知っていました。太陽がのぼり、一番高いところにきて、沈んで、また次の日の朝が来る。この繰り返しのリズムを「1日」と呼びました。
やがて人間は、1日を24時間に分け、1時間を60分に分け、さらに1分を60等分しました。

計算すると、24時間 × 60分 × 60秒 = 86,400秒 です。つまり、「1日(太陽が南の空の一番高いところを通ってから、次に通るまでの平均時間)の8万6400分の1」 を1秒と決めたのです。これが長いあいだ世界中で使われていた、天文学に基づく「天文時」の1秒でした。
地球が回るスピードはいつも同じじゃない?
「太陽の動きで決めるなら完ぺきじゃないか!」と思いますよね。ところが、科学の技術が進んで精密な観測ができるようになると、大問題が見つかりました。
なんと、地球が自分で回るスピード(自転)は、いつも決まっているわけではなく、ほんの少しずつ遅くなったり早くなったりしていたのです。
原因は、月の引力によって海の潮が満ち引きするときの摩擦や、地球の内部の動き、季節による空気の流れなどさまざまです。1日の長さそのものが伸び縮みしてしまうなら、それを8万6400等分して作った「1秒」も、季節や年によって伸びたり縮んだりしてしまいます。これでは、正確な科学の実験や宇宙ロケットの打ち上げ、世界中の通信などで困ってしまいますよね。
そこで登場したのが「ミクロの世界」の時計!
「地球の動きがふらつくなら、宇宙のどこへ行っても絶対に狂わない、変わらないものを使って1秒を測ろう!」
そうして世界中の科学者たちが目をつけたのが、目に見えないほど小さな小さな「原子(げんし)」という粒の世界でした。1967年に開かれた国際的な会議(国際度量衡総会)で、地球の自転に頼る方法をやめ、原子の性質を使った新しい1秒が正式に決められました。これが、今私たちが使っている「原子時」の1秒です。
いまの世界が決めている「正確な1秒」の正体
では、現在のルールでは1秒をどう説明しているのでしょうか。
セシウム原子の「振動」を数える
現在、世界の基準として選ばれているのは「セシウム133」という原子です。
原子に決まった高さのエネルギー(電波)を当てると、原子の中の電子がエネルギーを吸収したり放出したりして、まるで決まったテンポで踊るように規則正しい波(電磁波)を出します。
国際的な取り決めでは、セシウム133原子が出す決まった電磁波が「91億9263万1770回」振動するのにかかる時間を、きっかり「1秒」と定義しています。

91億回以上の振動を数えるなんて想像もつかない数字ですが、どんな場所にあっても、この原子のふるえるリズムは変わりません。「0.7秒でもよかったかもしれないあやふやな時間」を、科学者たちは原子の振動を使って、絶対に揺らがないものとしてしっかりと固定したのです。
【もっと知りたい人へ】専門的な解説と探究のヒント
さらに一歩踏み込んで調べてみたい人のための、小さな探究の手がかりです。
- 光格子時計(ひかりこうしどけい):いまの「セシウム原子時計」は数千万年に1秒程度の誤差ですが、日本の研究チームが開発をリードしている「光格子時計」は、ストロンチウムなどの原子を使って、なんと「数百億年に1秒」しかずれないレベルに達しています。将来、1秒の定義がセシウムから光格子時計へと新しく変わるかもしれません。気になったら「光格子時計 香取秀俊」などのキーワードで調べてみてください。
- うるう秒:地球の自転に基づいた時間(天文時)と、原子時計が刻む正確な時間(原子時)はずれていってしまいます。そのずれを合わせるために、1秒を足したり引いたりして調整してきた仕組みを「うるう秒」と呼びます。世界的なコンピューターシステムへの影響などを理由に、将来的に運用ルールが変わる予定もあります。「うるう秒 廃止」で検索してみると、現代社会の意外な課題が見えてきますよ。
おわりに
私たちが「いーち」と口にするその一瞬には、目に見えない時間をなんとか捕まえようとしてきた、人間たちの壮大な探究が息づいています。
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参照元
- 国際度量衡局(BIPM)国際単位系(SI)第9版(2019年)日本語版(国立研究開発法人産業技術総合研究所計量標準総合センター)https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/si-brochure/pdf/SI_9th_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E7%89%88.pdf
- 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)「日本標準時グループ:時間の単位」https://jjy.nict.go.jp/mission/unit.html
- 国立天文台(NAOJ)「よくある質問:1秒の長さはどうやって決めているの?」https://www.nao.ac.jp/faq/faq04.html
