いつもなにげなく使っているティッシュペーパー。ごはんのときに口をふいたり、鼻をかんだりするとき、毎日のように活躍していますよね。
でも、ふと考えたことはありませんか?「こんなにうすくて、ふわふわな紙って、一体どうやってつくられているんだろう?」
じつは、ティッシュペーパーができるまでには、木からつくる「技術のくふう」がたくさんつまっているのです。今回は、工場でティッシュペーパーが完成するまでの道のりを、いっしょにのぞいてみましょう!
ティッシュペーパーは何からできているの?
ティッシュペーパーの原料は、大きく分けると「木」です。(皆さん何となく知っていますよね!)
正確には、木をこまかくほぐして取り出した「パルプ」という繊維(せんい)から作られています。
パルプってどんなもの?
木を細かく刻んで、特別な液体といっしょに煮込むと、木の中にある「繊維」だけを取り出すことができます。これがパルプです。
ティッシュペーパーには、主に2種類のパルプが使われています。
- 針葉樹(しんようじゅ)のパルプ:
松やスギなど、葉っぱが細長い木から作られます。繊維が長いため、紙を破れにくく丈夫にする役割があります。 - 広葉樹(こうようじゅ)のパルプ:
ユーカリやブナなど、葉っぱが広い木から作られます。繊維が短いため、表面をなめらかにして柔らかくする役割があります。
この2つのパルプをバランスよく混ぜ合わせることで、「やわらかくて、ちぎれにくい」ティッシュペーパーが生まれます。
もっと詳しく知りたい人へ(専門解説)
日本で製造される一般的な家庭用ティッシュペーパーには、主に薬品で煮込んで取り出した「クラフトパルプ(Chemical Pulp)」が使用されます。また、木材資源の有効活用や感触の調整のために、再生紙(古紙)を配合した商品もあります。広葉樹パルプ(LBP)と針葉樹パルプ(NBP)の配合比率はメーカーや製品のグレードによって異なりますが、肌触りを重視する高級ティッシュでは広葉樹パルプの比率を高める工夫がなされています。
工場へ探検!ティッシュペーパーができるまでの4つのステップ
それでは、パルプがどのようにして私たちが知っているティッシュペーパーになるのか、工場の工程を見ていきましょう。

1. パルプを水に溶かして「紙のスープ」をつくる
まずは、水に固まりのパルプを入れて、大きなミキサーのような機械でぐるぐると混ぜ合わせます。
このときの状態は、なんと99%以上が水です。まるでシャバシャバしたスープのようになっています。
2. 水をきって、一気に乾かす
次に、この「紙のスープ」を平らな網(あみ)の上にうすく広げます。
網の下から水をぬくと、パルプの繊維どうしがからみついて、とてもうすい紙のシートになります。これを巨大なドラム(大きな温かいローラー)に貼り付けて、熱の力で一瞬で乾かします。
ドラムから紙をはがすとき、目に見えないくらい小さな「シワ」をつけることで、紙がやわらかく変身します。
3. 大きなロールに巻き取る
乾いた紙は、ものすごく大きなトイレットペーパーのような形に巻き取られます。これを「ジャンボロール」と呼びます。
このときの幅は2メートル以上、重さは1トン(車1台分くらい!)になることもあります。
4. 2枚重ねにして箱につめる
ジャンボロールから紙を引き出し、2枚重ねにしながら小さく折りたたんでいきます。
最後に、私たちがよく見る箱やビニールパックにつめられたら、ティッシュペーパーの完成です!
もっと詳しく知りたい人へ(専門解説)
機械でドライング(乾燥)を行う際、ドラム(ヤンキードライヤー)からドクターブレードと呼ばれる金属製の刃を使って紙を削ぎ落とす工程があります。この工程を「クレッピング(Creping)」と呼びます。クレッピングによって微細な立体的なシワ(クレープ)が形成され、紙に伸縮性と独自のやわらかさ、吸水性が付与されます。 また、ティッシュペーパーが「2枚重ね(プライ)」になっている理由は、クレッピングされた面を外側どうしにして合わせることで、どちらの面が肌にふれても柔らかい感触を保つためです。さらに、2枚の間に空気の層ができることで、吸水性と強度が向上します。
どうしてティッシュペーパーは水に溶けないの?
ここでひとつ、ふしぎに思いませんか?
「トイレットペーパーはトイレに流せるのに、どうしてティッシュペーパーはトイレに流しちゃいけないの?」
実は、トイレットペーパーとティッシュペーパーには、作り方に大きなちがいがあるのです。
トイレットペーパーとのちがい
トイレットペーパーは、水に入ると繊維がすぐにバラバラになるように作られています。
いっぽうで、ティッシュペーパーは、鼻をかんだり汗をふいたりしたときに破れないよう、「濡れても破れにくい成分(湿潤紙質向上剤)」が少しだけ入っています。そのため、水に入っても簡単には破れず、そのままトイレに流すとつまりの原因になってしまいます。
使い終わったティッシュペーパーは、トイレに流さず、かならずゴミ箱に捨ててくださいね。
もっと詳しく知りたい人へ(専門解説)
ティッシュペーパーの製造時には、水に濡れた状態での引っ張り強度(湿潤強度)を高めるため、湿潤紙質向上剤(主にポリアミドエピクロロヒドリン樹脂などの高分子化合物)が添加されます。これにより、水分の吸収時にも繊維間の水素結合が破壊されにくくなります。一方、トイレットペーパーはこの添加剤を使用しないか、ごく微量に抑えることで、水流によるせん断力で容易に不織解繊(ほぐれること)するように設計されています。
昔のティッシュペーパー(紙)
【豆知識】和紙とパピルスってどんな紙?
世界には、日本や外国で昔から作られてきた特別な「紙」があります。
- 和紙(日本)
- 作り方:コウゾやミツマタという植物の強い皮を使い、職人さんが「水の中でパタパタと揺らしながら」作ります。
- 特徴:繊維がとても長いため、何百年たっても破れにくく長持ちします。
- パピルス(エジプト)
- 作り方:パピルスという草の茎を細く切り、タテ・ヨコに並べてぎゅーっと重しをかけてくっつけます。
- 特徴:「紙(Paper)」の語源になったもので、厳密には繊維をほぐさずに草を固めたものです。
もっと詳しく知りたい人へ(専門解説)
- 和紙:クワ科の「楮(コウゾ)」やジンチョウゲ科の「三椏(ミツマタ)」「雁皮(ガンピ)」などを原料とし、「流し漉き(ながしずき)」という日本独自の技法で作られます。植物粘液(トロロアオイなどから採れる「ネリ」)を分散剤として使用することで、長い繊維が均一に絡み合い、非常に強靭で薄く耐久性の高い紙が仕上がります。
- パピルス:古代エジプトで用いられた筆記媒体で、カヤツリグサ科の植物「パピルス」の茎の髄(ずい)を薄く削ぎ切りにし、縦横に交互に敷き並べて圧搾・乾燥させたものです。繊維を「水中で一度バラバラにして絡み合わせる」という紙(Paper)の定義(蔡倫の手法)とは異なるため、構造上は製紙技術による「紙」ではなく「植物シート」に分類されます。
まとめ
毎日の生活で使っているティッシュペーパーには、たくさんの工夫が詰まっていましたね。
- 木(パルプ)の繊維を混ぜ合わせて作られている
- うすく伸ばして乾かすときに小さなシワをつけることで、ふわふわになる
- 2枚重ねにすることで、やわらかさと破れにくさを両立させている
- 水に溶けにくい仕組みがあるので、トイレには流さない
次にティッシュペーパーを使うときは、「あ、これが小さなシワのやわらかさなんだな」と触り心地を感じてみてくださいね。身の回りのものには、まだまだたくさんの「科学と工夫」が隠れていますよ!
おすすめ記事
参照元
- 日本紙類洋紙卸商連合会(家庭紙に関する基礎知識) https://www.kami-sho.or.jp/
- 日本製紙連合会(製紙工程・パルプについて) https://www.jpa.gr.jp/
- 製紙メーカー各社(王子ネピア・大王製紙等)「ティッシュペーパーの製造プロセス」公開情報