「空に向かって銃弾を撃ったら、そのまま宇宙まで飛んでいくのかな?」「それとも、どこかに落ちてきて危ないのかな?」なんて、アニメや映画のワンシーンを見て不思議に思ったことはありませんか?
実は、平和に思える日本でも、警察官が犯人を止めるために上空へ向かってピストルを撃つ「威嚇射撃(いかくしゃげき)」を行うことがあります。
「警察官が空に向かって撃つのなら、空に撃つ銃弾は危なくないのかな?」と疑問に思うかもしれませんね。その素朴なハテナ、とっても大切で素敵です!
今回は、日本での威嚇射撃のお話にも触れながら、空に向かって撃った銃弾がどうなってしまうのか、科学の視点からいっしょに探っていきましょう。
空に向かって撃った銃弾はどうなるの?
結論からお話しすると、空に向かって撃った銃弾は非常に危険です。「空だから誰にも当たらない」ということは決してありません。
撃ち出された銃弾がどのような旅をして、どうして危険なのかを順を追って見ていきましょう。
撃たれた銃弾の旅

銃を空に向かって撃つと、銃弾はとてつもないスピードで上へと飛んでいきます。しかし、ずっと登り続けられるわけではありません。
- 上に向かって飛んでいく:
最初はすごい勢いで空へ向かいます。 - スピードが落ちて止まる:
地球には「重力(じゅうりょく)」という引っ張る力があり、さらに空気の邪魔(空気抵抗)を受けるため、だんだんスピードが落ちていき、やがて空中で一瞬だけストップします。 - 地上に向かって落ちてくる:
止まった銃弾は、今度は重力に引かれて地上に向かって一直線に落ちてきます。
つまり、上に向かって撃ったものは、必ず地上に戻ってくるのです。
落ちてくるときのスピードと危険性

「落ちてくるだけなら、雨やドングリみたいに当たっても痛いくらいで済むのでは?」と思うかもしれません。ですが、銃弾はとても重く、空気の影響を受けにくい形をしているため、落ちてくるときにも恐ろしいスピードが出ます。
上空から落ちてくる銃弾のスピードは、
時速200キロメートルから300キロメートル以上
(秒速60〜90メートル以上)
にも達することがあります。これは、新幹線やプロ野球選手の投げるボールよりもずっと速いスピードです。
そんな速さで金属のかたまりが頭の上から落ちてきたらどうでしょう? 人間の皮膚や骨を簡単に突き破ってしまうほどの強い力を持っています。そのため、海外などでお祝いとして空に向かって銃を撃つ行為(お祝い射撃)によって、遠く離れた場所にいた人が落ちてきた銃弾に当たって怪我をしたり、命を落としたりする事故が世界中で実際に起きています。
日本の警察官が行う「威嚇射撃」と危険性
ニュースなどで「警察官が空に向かって警告の威嚇射撃をした」という話を聞いたことがあるかもしれません。日本の警察官が使う「警察官職務執行法」というルールでも、やむを得ない場合には上空などへ警告射撃をすることが認められています。
ですが、警察官も「空なら100%安全」と思っているわけではありません。空に向かって撃った銃弾もいつかは必ず落ちてきて危険だからこそ、周囲に人がいないかなどを判断し、本当に追い詰められた最後の手段として慎重に行っているのです。
【補足】さらに詳しく知りたい人へ:落下運動と終末速度の科学
ここでは、少し専門的な物理のお話を使って、「なぜ落ちてくる銃弾がそれほど危険なのか」を掘り下げて解説します。
銃弾が落ちるスピードの限界「終末速度」
物体が空から落ちるとき、重力によってどんどんスピードが上がっていきます(加速)。しかし、スピードが上がれば上がるほど、反対向きに押す「空気抵抗(くうきていこう)」も強くなっていきます。
やがて、「下へ引っ張る重力」と「押し返す空気抵抗」の大きさがぴったり同じになります。力がつり合うと、それ以上はスピードが上がらなくなり、一定の速さで落ちていくようになります。この限界のスピードのことを「終末速度(しゅうまつそくど / Terminal Velocity)」と呼びます。
銃弾の終末速度は、以下の要素によって決まります。
- 銃弾の重さと形:重くて細長い形状ほど空気抵抗を受けにくく、終末速度が速くなります。
- 落ちてくるときの姿勢:銃弾が真っ直ぐ先端を下に向けたまま落ちてくる(安定している)か、回転しながら横向きに落ちてくる(不安定)かによって速さが変わります。
もし銃弾が先端を下にして綺麗に落ちてきた場合、終末速度は秒速90メートル(時速324キロメートル)を超えることもあります。
人体にダメージを与えるエネルギー
物理学では、動いている物体が持つ破壊力の目安として「運動エネルギー」を使います。運動エネルギーは次の計算式で表されます。
- 運動エネルギー = 1/2 × 物体の質量 ×(速さの2乗)
スピード(速さ)が2倍になると、エネルギーは4倍に膨れ上がります。
一般的な研究や実験データによると、人間の皮膚を突き破るために必要な運動エネルギーは約2〜3ジュール(または単位面積あたりのエネルギー密度)と言われています。空から落ちてくる一般的な小銃やピストルの銃弾(重さ数グラム〜十数グラム)は、終末速度に達した時点で10ジュールから数10ジュール以上のエネルギーを維持していることが多く、皮膚だけでなく頭蓋骨を貫通するのにも十分な威力となります。
また、真上(90度)ではなく、少し斜めに向かって撃った場合はさらに危険です。斜めに撃たれた銃弾は放物線を描いて飛ぶため、回転する力を保ったまま高いスピードを維持して地上に落ちてきます。この場合は終末速度以上の速さで着弾するため、殺傷能力が非常に高くなります。
まとめ
空に向かって撃った銃弾について、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 日本で警察官が行う「威嚇射撃」も含め、上に向かって撃った銃弾は重力によって必ず地上に落ちてくる。
- 落ちてくるときも新幹線並みのすごいスピード(終末速度)になる。
- 落ちてきた銃弾が人に当たると、命に関わる大きな事故になる。
「誰もいない空だから大丈夫」と思って撃った銃弾でも、風に流されて遠くの誰かの頭の上に落ちてしまうかもしれません。空に向かって銃を撃つことは、絶対にやってはいけないとても恐ろしい行為なのです。
日々の暮らしの中で「これってどうなっているんだろう?」と疑問に思うことは、科学の楽しさへの第一歩です。これからもたくさんの「なぜ?」を大切に探求していきましょうね!
おすすめ記事
参照元
- 警察官職務執行法(第7条:武器の使用についての規定)
- National Center for Biotechnology Information (NCBI) – “Celebratory Gunfire: A Public Health Concern” (お祝い射撃による被害と空中からの落下銃弾の運動エネルギーに関する研究論文)
- U.S. Army Armament Research, Development and Engineering Center (ARDEC) – Bullet Trajectory and Terminal Velocity Studies (銃弾の弾道および終末速度に関する技術レポート)
- Firearm Injury Center at Medical College of Wisconsin – Falling Bullets Research Data (落下銃弾の危害性に関する調査データ)