日常生活でふと足の小指をぶつけたり、急な頭痛に襲われたりしたとき、「世の中で一番痛いものって何だろう?」と疑問に思ったことはありませんか。痛みは目に見えない主観的な感覚ですが、医学界では客観的に痛みの強さを比較する評価基準が存在します。今回は、医学的な指標をもとに「人間が経験し得る最も強い痛み」を分かりやすく掘り下げていきます。
痛みを数値化する「マギル痛み質問票」とは?
痛みは人それぞれ感じ方が異なるため、比較が難しい感覚です。そこでカナダのマギル大学の研究チームが開発したのが「マギル痛み質問票(McGill Pain Questionnaire)」です。痛みの強さや質を表す言葉に点数を割り振ることで、痛みを数値として測定・比較できるようにしました。今回はこの指標や臨床現場の評価をもとに、上位に挙げられる代表的な痛みを整理しました。
人体が感じる激痛ランキングとメカニズム
1位:群発頭痛(別名:自殺頭痛)
・群発頭痛
「目の奥をえぐられるような激痛」と表現され、成人が耐えうる最大の痛みのひとつに挙げられます。頭部にある三叉神経や血管の急激な拡張、体内時計を司る視床下部の関与が指摘されています。
2位:尿路結石
・尿路結石
「三大激痛」のひとつとして知られ、突然激しい腰背部痛や側腹部痛を引き起こします。腎臓で作られた石が細い尿管に詰まり、尿の流れが滞って、尿管が激しく痙攣することで鋭い痛みが走ります。
3位:複合性局所疼痛症候群(CRPS)
・複合性局所疼痛症候群
骨折や捻挫などの外傷をきっかけに発症する慢性疼痛疾患です。マギル痛み質問票でも無痛分娩や切断痛を上回る最高水準のスコアを記録します。「風が吹くだけでも痛い」という表現から尿酸結晶による関節炎である「痛風」と混同されがちですが、痛風とは全く異なり、神経系の情報伝達エラーによって生じる病気です。傷が治った後も神経が興奮し続け、衣服やそよ風が触れるだけでも焼け付くような耐えがたい痛みが続きます。
4位:急性膵炎
・急性膵炎(すいえん)
「のたうち回るほどの激痛」と称される上腹部の痛みで、背中まで突き抜けるような特徴があります。アルコールや胆石などを原因として、膵臓から分泌される消化酵素が自身の組織を消化し始めてしまうことで激しい炎症と痛みが起こります。
5位:三叉神経痛
・三叉神経痛(さんさ)
顔面の感覚を司る三叉神経が、近傍の血管によって圧迫されることで生じる神経痛です。食事、洗顔、歯磨き、風があたるなどのわずかな刺激をきっかけに、電気が走るような一瞬の鋭い激痛が突発的に走ります。
番外編:出産の痛み(初産婦の陣痛)
・陣痛・分娩痛
子宮筋の強力な収縮と子宮頸部の伸展によって生じる激しい痛みです。マギル痛み質問票でも極めて高いスコアに位置付けられており、長時間の身体的・精神的負荷を伴う大仕事です。
なぜこれほど強い痛みが生じるのか?
私たちが痛みを感じる根本的な役割は「身体に危機が迫っていることを知らせる警告サイン」です。
内臓や神経は、皮膚のように日常的に外部と接触しないため、内部で強い圧力がかかったり神経そのものが圧迫・損傷されたりすると、脳は「最大級の異常事態」と判定して強い痛み信号を発信します。尿路結石の圧力上昇や三叉神経の圧迫が飛び抜けて痛むのは、こうした人体の防御システムが最大限に発動するためです。
さらに詳しく知りたい方へ
痛みの測り方やメカニズムについてもっと深く知りたくなった方は、ぜひ以下のキーワードを調べてみてください。
・マギル痛み質問票(McGill Pain Questionnaire)
痛みをどのように言葉と数値で捉えているのか、詳細な評価軸を調べることができます。
・VAS(Visual Analogue Scale)
病院の診察現場で一般的に使われている、痛みの視覚的評価スケールです。
・侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の違い
ケガによる痛みと神経の異常による痛みの違いを知ると、痛みの正体がより理解しやすくなります。
まとめ
人体が感じる最大の痛みは、神経の直接的な圧迫や管腔臓器の急激な圧力上昇といった「人体の警告システム」が極限まで作動することで生じます。
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参照元
- 臨床神経生理学 / 日本臨床神経生理学会
- 日本頭痛学会 ガイドライン
- McGill University: McGill Pain Questionnaire (Melzack, R., 1975)
- 厚生労働省難治性疾患克服研究事業 難治性疼痛に関する調査研究班
