お気に入りのペン、おやつの袋、毎日飲むペットボトル。ふと周りを見渡すと、私たちの暮らしは「プラスチック」でいっぱいです。
「軽くてじょうぶで、水にも強くて便利だな」と思う一方で、「そもそもこれって何からできているんだろう?」「どうしてこんなに形を自由に変えられるの?」と不思議に思ったことはありませんか? 当たり前のようにそばにある素材だからこそ、正体を知ると毎日の見え方がガラリと変わります。身近な「なぜ?」をいっしょに解き明かしていきましょう。
プラスチックのヒミツを大解剖!
プラスチックは何からできているの?
プラスチックの正体は、大昔の生き物の死がいなどが長い時間をかけて変化した「石油(原油)」です。
石油を工場で細かく分けていくと、「ナフサ(粗製ガソリン)」という透明な液体ができます。ナフサは、炭素が5個から10個ほどつながった油の仲間です。
ナフサについては以下の記事をご覧ください。
⇒今話題の「ナフサ」ってなに?

このナフサをプラスチック工場で800℃以上の超高温スチームを使って一気に加熱すると、分子のつながりがパチンと叩き割られます(熱分解)。ここで生まれるのが、「エチレン」や「プロピレン」といった目に見えない小さな粒(分子)です。エチレンは炭素が2つ、プロピレンは炭素が3つという非常に小さな姿をしていて、常温では空気のようにふわふわと漂う気体(ガス)として生まれます。これがプラスチックの直接の原料です。
気体からどうやって硬いプラスチックになるの?
小さな気体の粒のままでは、サラサラと自由に飛び回るだけで形を作ることができません。そこで工場では、熱や圧力を加えながら、小さな粒どうしを長〜いクサリのようにつなぎ合わせる工夫をします。
- 手をつなぐ前の粒: 単量体(モノマー)
- 長くつながった状態: 重合体(ポリマー)
たとえば、エチレンという分子の中には炭素同士が2本の手でがっちり握手している部分(二重結合)があります。そこに熱や「触媒」という特別な助っ人薬品を加えると、2本ある手のうち1本がパッと開き、隣にいる別のエチレンの手を次々とつかみます。

まるでドミノ倒しのように一瞬で何万個もの粒が手をつなぎ、1本の巨大なロープ(ポリエチレン)に変身します。小さなクリップも、1個だけなら簡単に落としたり無くしたりしますが、何万個もつなげて長いロープにすると強くて切れにくくなりますよね。気体だった分子が長大なクサリになることで、もう勝手に飛び回れなくなり、しっかりとした素材へと生まれ変わるのです。

なぜクサリがつながると硬く丈夫になるの?
クサリになった分子が集まるとなぜ硬くなるのか、そこには2つの大きな理由があります。
ひとつは「分子間力(ぶんしかんりょく)」の結集です。どんなに小さな分子の間にも、お互いを引き寄せ合うごくわずかな引力が働いています。小さな粒1個では引力が弱すぎて気体のままですが、何万個もつながって長いロープになると、ロープ同士が触れ合う面積が何万倍にも広がります。小さな力が無数に積み重なることで強力な引きつけ合いが起こり、常温でカチッとした「固体」になります。
もうひとつは「スパゲッティの絡まり合い」です。できあがった無数の長いクサリは、お皿に盛られた茹でたてのスパゲッティのように複雑に絡み合っています。外から引っ張ったり押したりする力が加わっても、絡み合ったクサリ同士がガッチリとブレーキをかけ合うため、簡単には千切れたり壊れたりしない強さが生まれます。
同じプラスチックでも硬さが違うのはなぜ?
同じ「ポリエチレン」という素材でも、マヨネーズのボトルのように柔らかいものもあれば、ポリバケツのようにカチカチに硬いものもあります。この違いは、分子のクサリの並び方(密度)で決まります。
- 低密度ポリエチレン(LDPE):
クサリの途中に枝分かれがたくさんあるタイプ。枝が邪魔をしてクサリ同士がぎゅっと隙間なく詰まることができず、少しゆったりと並ぶため、柔らかくしなやかなフィルムやチューブになります。 - 高密度ポリエチレン(HDPE):
枝分かれがほとんどなく、まっすぐな一本線のクサリ。クサリ同士がすき間なく規則正しくギッシリ並ぶため、白っぽくてカチカチに硬いボトルやバケツになります。
なぜいろんな形を作れるの?
プラスチックという言葉は、もともとギリシャ語の「形作ることができる(プラスティコス)」という言葉から来ています。
多くのプラスチックは、熱を加えるとドロドロに溶け、冷やすと固まる性質を持っています。これは、チョコレートを湯せんで溶かして型に流し込み、冷蔵庫で冷やすと好きな形に固まる仕組みとまったく同じです。分子同士の絡み合いは熱を加えるとほどけて液体のように流れ、冷やすと再びギュッと引き合って固まります。この性質のおかげで、薄いレジ袋から複雑なおもちゃのパーツまで、自由自在に形を作ることができます。
代表的なプラスチックの種類と使い分け
暮らしの中では、それぞれの特徴を活かしていろいろなプラスチックが活躍しています。
- ポリエチレン(PE):
水に強くてしなやか。レジ袋、洗剤容器、マヨネーズのボトルなど。 - ポリプロピレン(PP):
軽くて熱に強く、繰り返し折り曲げても割れにくい。電子レンジ対応容器やペットボトルのキャップなど。 - ポリエチレンテレフタレート(PET):
透明感が高く、気体を通しにくい。ペットボトルやフリース素材の衣類など。 - ポリスチレン(PS):
軽くて加工しやすく、泡を含ませると保温性が高まる。発泡スチロールや食品トレイなど。
製品の底や裏側をよく見てみると、「プラ」マークの周りに「PP」「PE」といった素材のアルファベットが記されています。見つけたらぜひチェックしてみてくださいね。
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重合反応のバリエーション
エチレンのように二重結合を開いて次々につながる反応を「付加重合」と呼びます。一方で、分子同士が出会うときに水などの小さな分子を切り離しながらつながる「縮合重合(しゅくごうじゅうごう)」という方法もあります。ペットボトルのPET(ポリエチレンテレフタレート)やナイロンは、この縮合重合によって作られています。
熱可塑性と熱硬化性:分子の橋かけ構造
プラスチックには、熱を加えたときの性質で2つの大きなグループがあります。
- 熱可塑性(ねつかそせい)樹脂:
温めると何度でも溶け、冷やすと固まるタイプ(PE、PP、PETなど)。クサリが個別に絡み合っている構造です。 - 熱硬化性(ねつこうかせい)樹脂:
熱を加えるとクサリ同士の間に頑丈な「橋(架橋構造)」がかかり、カチカチに固まるタイプ。一度固まると再び加熱しても溶けず、焦げるまで硬さを保ちます(鍋の取っ手、食器、電子基板など)。クッキーの生地をオーブンで焼くと、冷ましても二度と元の柔らかい生地には戻らない現象と同じです。
もっと深く探求したい人は、図書館やインターネットで「付加重合と縮合重合の違い」や「高分子の結晶化度と物性」について調べてみてください。化学の奥深い仕組みがさらに見えてきますよ。
まとめ
プラスチックは、石油から生まれた気体の粒が長く手をつなぎ、分子同士が力強く絡み合って生まれた、科学の工夫がいっぱいに詰まった素材です。
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参照元
- 一般社団法人 プラスチック循環利用協会「プラスチックとは」https://www.pwmi.or.jp/
- 経済産業省「プラスチック資源循環」https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/recycle/plastic/index.html
- 文部科学省「小学校理科の観察・実験の手引き」

