春や秋になると、目がかゆくなったり、くしゃみや鼻水が止まらなくなったりして困ることはありませんか。
花粉症は春先だけではありません!
花粉症は私たちの体が自分を守ろうとして起こる、体の仕組みが深く関係しています。どのような仕組みで起こり、どんな植物が原因になるのか、毎日の素朴な疑問を一緒に解き明かしていきましょう。
どうして花粉でくしゃみが出るの?花粉症の仕組み
普段の生活のなかで、「目に見えないくらい小さな花粉が体に入るだけで、なぜ大騒ぎになってしまうのだろう」と疑問に思うかもしれません。その秘密は、体に備わっている「免疫(めんえき)」という防衛システムにあります。
体の警備隊が勘違いしてしまう
私たちの体には、ウイルスや細菌などの危険な外敵から身を守る「免疫」という優れた警備隊がいます。通常、植物の花粉は毒を持たないため、体内に入っても体に害はありません。
ところが、体質によっては、警備隊が「花粉は危険な敵だ!」と思い込んでしまうことがあります。外敵だと判断すると、体は花粉を捕まえるための「IgE抗体(アイジーイーこうたい)」という特別な網(武器)を作り出します。
コップの水があふれるように発症する
花粉を吸い込むたびに、この網(IgE抗体)は体の中に少しずつ増えていきます。これはよく「水がたまるコップ」に例えられます。
最初のうちはコップに水がたまっていくだけなので、症状はまったく出ません。「去年までは何ともなかったのに、急に今年から花粉症になった」という声をよく聞くのは、ため続けていたコップの水がついに縁を越えてあふれ出した合図なのです。
アレルギー反応のスイッチが入る
コップから水があふれると、目や鼻の粘膜にある「肥満細胞(マスト細胞)」というカプセルに網が結合します。そこに再び花粉が入ってくると、カプセルが破れて「ヒスタミン」などの化学物質が外へ飛び出します。
このヒスタミンが神経や血管を刺激することで、次のような反応が起こります。
- くしゃみ:体内に入った花粉を一気に外へ吹き飛ばそうとする反応
- 鼻水・涙:粘膜についた花粉を洗い流そうとする反応
- 鼻づまり:これ以上花粉が奥に入ってこないように、鼻の粘膜を腫れさせて通り道をふさぐ反応
つらい症状はすべて、体が一生懸命に花粉を追い出そうとしている防衛反応なのです。
花粉症を引き起こす主な植物の種類
「花粉症といえば春」というイメージが強いかもしれませんが、実は季節ごとにさまざまな植物の花粉が空気中を漂っています。
季節と植物の一覧表
日本でアレルギーを引き起こしやすい主な植物と、その特徴をまとめました。
| 植物名 | 分類 | 主な飛散時期 | 主な生息場所 | 飛散距離・特徴 |
| スギ | 樹木 | 2月〜4月 | 山林(植林地) | 数十km以上風に乗って広範囲に飛散する。日本で最も患者数が多い。 |
| ヒノキ | 樹木 | 3月〜5月 | 山林 | スギ花粉の終盤から飛び始める。スギと構造が似ており重複しやすい。 |
| シラカンバ(白樺) | 樹木 | 4月〜6月 | 北海道、東北、高原地帯 | 冷涼な地域に自生。果物アレルギー(リンゴ等)を併発しやすい。 |
| カモガヤ / オオアワガエリ | イネ科(草本) | 5月〜7月 | 道端、河川敷、空き地、堤防 | 初夏に多く飛散。背丈が低く、自生している周囲数十〜数百mに飛散。 |
| ブタクサ | キク科(草本) | 8月〜10月 | 道端、空き地、河川敷 | 秋の花粉症の代表格。早朝に花粉を飛ばす特徴がある。 |
| ヨモギ | キク科(草本) | 9月〜10月 | 道端、堤防、公園 | ブタクサと並ぶ秋の代表。草むらや身近な道端に多く自生する。 |
| カナムグラ | アサ科(草本) | 9月〜10月 | 空き地、道端(つる性) | 荒れ地などに生えるつる草。秋に黄色い花粉を飛ばす。 |
樹木と草花の違いを知ろう
スギやヒノキのような背の高い木(樹木)の花粉は、風に乗って山から街まで何十キロメートルも飛んでいきます。そのため、山から離れた場所に住んでいても防ぐのが難しくなります。
一方で、カモガヤやブタクサなどの背の低い草(草本)の花粉は、数メートルから数百メートル程度しか飛びません。そのため、草が生えている空き地や河川敷に近づかないことや、草刈りが行われている場所を避けることがとても有効な対策になります。
もっと知りたい人へ!一歩進んだ専門的な解説
体の仕組みをもっと詳しく調べてみたい人向けに、手がかりとなるポイントを紹介します。
- 「獲得免疫と自然免疫」:体には生まれつき備わっている防御壁と、後から学習して敵を覚える仕組みがあります。花粉症は、学習システムである「獲得免疫」のバランスが関わっています。
- 「マスト細胞とケミカルメディエーター」:ヒスタミン以外にも、ロイコトリエンやプロスタグランジンといった物質が関わっています。これらがどのように血管を広げたり鼻づまりを起こしたりするのか、ぜひ生物の図鑑や医学書で調べてみてください。
- 「花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)」:花粉症の人が生の果物や野菜を食べると口の中がかゆくなる現象があります。花粉と果物に含まれるタンパク質の形がそっくりなために起こる反応です。
日常生活でできる工夫
体に入る花粉の量を少しでも減らすことで、症状をやわらげることができます。
- 外から帰ったら服をはらう:家の中に花粉を持ち込まないよう、玄関先でコートや上着を手で軽くはらいましょう。
- 手洗いとうがい、洗顔をする:顔や手についた花粉を水でキレイに洗い流します。
- マスクやメガネを上手に使う:吸い込む花粉の量を目や鼻から減らす工夫をしましょう。
自分の体の仕組みを知ることで、つらい症状も「体が自分を守ろうと頑張っているサイン」だと分かります。正しく知って、上手に対策をしていきましょう。
おすすめ記事
参照元
- 厚生労働省「的確な花粉症の治療をしよう」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kafun/index.html
- 環境省「花粉症環境保健マニュアル」https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/manual.html
- 一般社団法人 日本アレルギー学会「アレルギーポータル」https://allergyportal.jp/

