私たちの身の回りには便利な電気製品がたくさんあふれています。実は、そうした便利な機械の心臓部で大活躍しているのが「半導体(はんどうたい)」と呼ばれる特別な材料です。
なんとなく電気を通したり、通さなかったりするものだと理解していると思います。今回は、そんな半導体がどのような仕組みで電気を通したり止めたりしているのか、身近な疑問からひもといていきましょう。
そもそも「半導体」ってなに?
半導体の仕組みを知るために、まずは身の回りにある「電気の通り道」について考えてみましょう。
電気を通すもの、通さないもの
世の中にある物質は、電気を通しやすいかどうかで大きく2つのグループに分けられます。
- 導体(どうたい)
鉄、銅、アルミニウム、金などの金属。電気をとてもよく通します。 - 絶縁体(ぜつえんたい)
ゴム、ガラス、プラスチック、陶器など。電気をほとんど通しません。
条件によって変わる「まほうの物質」
では、「半導体」はどちらの仲間だと思いますか。
名前に「半」とついている通り、半導体は「導体」と「絶縁体」のちょうど真ん中の性質を持っています。普段は何もしなければ電気をほとんど通さない絶縁体に近い状態ですが、熱を加えたり、光を当てたり、ほんの少し別の物質を混ぜたり、外から電圧(電気の力)をかけたりすることで、電気をスッと通す導体へと変化します。
つまり、「電気を通したり、通さなかったり、人間が自由にコントロールできる物質」が半導体なのです。
なぜ電気をコントロールできるの?半導体の原理
電気の正体は「電子」の流れ
物質を細かく見ていくと、中心にある「原子核(げんしかく)」のまわりをマイナスの電気を持った「電子」が回っています。この電子が自由に動いて移動することこそが「電気が流れる」正体です。

金属(導体)の中には、自由に動き回れる電子(自由電子)がたくさんあるため、すぐに電気が流れます。反対にゴムやガラス(絶縁体)は、電子同士がしっかりと手をつなぎ合って固定されているため、自由に動ける電子がおらず、電気が流れません。
シリコンという特別な材料
代表的な半導体の材料としてよく知られているのが「シリコン(ケイ素)」です。
純度100パーセントに近い純粋なシリコンの結晶は、まわりの原子同士が4つの電子を出し合ってしっかりと手を結んでいます(これを共有結合と呼びます)。隙間なく手をつないでいるため、電気をほぼ通しません。
スパイス「不純物」を加える
この純粋なシリコンに、ごくわずかだけ別の物質をスパイスのように混ぜ合わせます。すると、電気の流れやすさが劇的に変わります。
混ぜる物質の違いによって、2種類の半導体をつくることができます。

n型(エヌがた)半導体
リンなどを少し混ぜると、電子が1つ余ってしまいます。この余ったマイナスの電子(自由電子)が自由に動けるようになり、電気が流れます(Negativeの「n」です)。
p型(ピーがた)半導体
ホウ素などを少し混ぜると、電子が1つ足りない穴ができます。この穴を「正孔(せいこう / ホール)」と呼び、プラスの電気を持っているように振る舞います。まわりの電子がこの穴に次々と移動していくことで、電気が流れます(Positiveの「p」です)。
電気を通したり通さなかったりする仕組み:境界線で起きるドラマ
n型半導体とp型半導体をつなぎ合わせた境目(接合部)では、「電気を通すか、通さないか」を決める面白い現象が起きています。
何もしていないときは「通せんぼ」の壁ができる

p型とn型をぴったりくっつけると、境目の近くにあるn型の余った「電子」と、p型の足りない場所「正孔(穴)」が、磁石のように引き合ってパッとくっつき、打ち消し合って消えてしまいます。
すると、境目のまわりには動ける電子も正孔もまったくない「空っぽのエリア(空乏層 / くうぼうそう)」が生まれます。ここには自由に動ける電気の運び手がいないため、頑丈な「通せんぼの壁(バリア)」となり、普段は何もしなければ電気が通りません。
電気を通す仕組み:順方向の電圧

では、どうやって電気を通すのでしょうか。
p型側にプラス、n型側にマイナスの電気(電圧)をつなぎます。すると、マイナスの電気はn型の電子を境目に向かって強く押し出し、プラスの電気はp型の正孔を境目に向かって強く押し出します。
両側から強く押された電子と正孔は「通せんぼの壁」を軽々と乗り越え、次から次へと境目を通り抜けて流れていきます。こうして、せき止められていたダムのゲートが開いたように「電気が勢いよく通る状態」になります。
電気を通さない仕組み:逆方向の電圧
反対に、p型側にマイナス、n型側にプラスの電気をつなぐとどうなるでしょうか。
n型の電子はプラス側に引っ張られ、p型の正孔はマイナス側に引っ張られてしまいます。つまり、お互いに境目からどんどん遠ざかる方向へ逃げていってしまうのです。
その結果、境目にある「通せんぼの壁」は以前よりもさらに広く、分厚くなってしまいます。通り抜けるための電子や正孔が境目からいなくなってしまうため、いくら電気を流そうとしても「電気は完全にストップして通らない状態」を保ちます。
このように、外から加える電気の向きや強さによって境目の「壁」を消したり広げたりできることこそが、半導体が電気を通したり通さなかったりする核心の仕組みです。
身近な機械で大活躍:スイッチと交通整理
この「通す・通さない」を自在にコントロールできる仕組みを使うことで、驚くような便利な機能が生まれます。
一方通行にする「ダイオード」
先ほど紹介したp型とn型を1つずつくっつけた部品を「ダイオード」と呼びます。
ダイオードは、まさに「一方向にしか電気を通さない」という一方通行の標識のような役割(整流作用)を果たします。家庭のコンセントに流れる行き来する電気(交流)を、スマートフォンやパソコンが使える一方通行の電気(直流)に整えることができるのは、この仕組みがあるからです。また、境目を電子と正孔が通り抜けるエネルギーで光をピカッと放つのが、身近な照明や画面に使われる「LED(発光ダイオード)」です。
超高速でカチカチ切り替える「トランジスタ」
さらに、半導体を「n-p-n」や「p-n-p」のように3層のサンドイッチにしたものを「トランジスタ」と呼びます。
トランジスタは、真ん中の薄い層にわずかな電気信号を送るだけで、両端の大きな電気の通り道を「開く(ON / 通す)」「閉じる(OFF / 通さない)」と操ることができます。指でカチカチ動かす壁のスイッチと違い、電気の力だけで1秒間に何億回、何十億回もの超ハイスピードでONとOFFを切り替えられます。
コンピュータは、すべての言葉や画像、動画を「0」と「1」の組み合わせだけで計算・処理しています。この「0」と「1」を表現しているのが、まさにトランジスタの「通さない(0)」と「通す(1)」の切り替えです。爪の先ほどの小さなチップの中に何十億個ものトランジスタが並び、猛烈なスピードでONとOFFを繰り返しているからこそ、スマートフォンでゲームを楽しんだり動画をなめらかに再生したりできるのです。
専門的な解説(さらに知りたい方へ)
もっと物理や化学の視点から深く探求してみたい方は、ぜひ以下のキーワードを調べてみてください。高校の物理や大学の工学部で学ぶワクワクする世界が広がっています。
- バンド理論(エネルギーバンド構造):
電子が存在できる「価電子帯」と、自由に動ける「伝導帯」、その間にある電子が存在できないエネルギーの隙間「バンドギャップ(禁制帯)」に注目してみてください。半導体のバンドギャップの広さが、なぜ絶妙な電気特性を生み出すのかが数理的に理解できます。 - キャリアの拡散とドリフト電流:
pn接合面における多数キャリアの拡散と、内部電界によって生じるドリフト電流の釣り合い(平衡状態)や、内蔵電位差(ビルトインポテンシャル)の形成過程を追うと、より厳密な理解が得られます。 - MOSFET(電界効果トランジスタ):
現代の集積回路(LSI)の主役である「MOSFET」の構造(ゲート、ソース、ドレイン)や、絶縁膜(酸化膜)を介して電圧をかけ、静電誘導で電子の通り道(チャネル)をつくる電界効果の仕組みを調べてみるのもおすすめです。
まとめ
半導体は、ミクロな境界線で電気を「通す」と「通さない」を自由自在に操ることで、暮らしのあらゆる機械を賢く動かしている現代の立役者です。
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参照元
- 一般社団法人日本半導体製造装置協会(SEAJ)「半導体ってなに?」
https://www.seaj.or.jp/ - 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST)「半導体・集積回路の基礎知識」
https://www.aist.go.jp/ - 文部科学省「科学技術白書」
https://www.mext.go.jp/

