もし宇宙へ旅行に行ったとき、宇宙服を脱いでしまったら私たちの体はどうなってしまうのでしょうか。映画やSF作品で見かけるような「体が爆発してしまう」というお話は本当なのでしょうか。
宇宙空間で命をおとす仕組みを一緒にひもといてみましょう。
宇宙で命をおとす絶対的な要因:息ができなくなる
宇宙空間に生身で出たとき、一番最初におとずれる決定的な要因は「激しい窒息」です。
酸素を吸うどころか、体から抜き取られる
- 吸える空気がまったくありません
宇宙はほぼ完全な真空なので、呼吸に必要な酸素が存在しません。 - 肺の酸素が一気に宇宙へ逃げ出します
外の気圧がゼロに近いため、息を吸えないだけでなく、肺の中に残っていた酸素が宇宙空間へと急速に逆流してします。(風船のような感じ) - 約10秒から15秒で意識を失います
脳へ送るための酸素が完全になくなってしまうため、あっという間に気を失って倒れてしまいます。 - 息を止めようとするとさらに危険です
息を止めると、肺に残った空気が膨らんで肺そのものを破裂させてしまう危険があります。
もし息ができたらどうなる?次に直面する2つの危機
「息ができない」というので終わってしまうとなんともつまらないですね笑
なので、もし宇宙空間で呼吸できたらどうなるか見ていきましょう!
1. 体の水分が沸とうする(体液沸騰)
- 水は気圧が下がると体温でも沸騰します
沸騰の温度は気圧によって変わるのを知っていますか?気圧がゼロに近い宇宙では、唾液や涙、肺の表面などの水分が体温の温かさだけでブクブクと泡立ちます。
*気圧と沸騰の関係については以下の記事を見てね
⇒富士山のてっぺんでは100℃のお湯はつくれない?!気圧と水の関係について解説!圧力鍋の仕組みを知ろう! - 皮膚の下で水分が気体に変わります
血液自体は血管の圧力で守られますが、皮下の水分が水蒸気になることで体が風船のように約2倍近くまでふくらんでしまいます(映画のように破裂することはありません)。 - 血液の流れが止まってしまいます
血管や組織に気泡ができることで血液がうまく全身を巡らなくなり、心臓や脳の機能が止まってしまいます。
2. 極端な温度差と強力な宇宙放射線
- 日なたは約120度、日かげは約マイナス150度です
大気がないため熱がやわらげられず、太陽の光が当たる面は激しい熱にさらされ、当たらない面は熱を失っていきます。 - 一瞬で凍るわけではありません
体積あたりの熱はじわじわと放射によって奪われていくため、カチコチに凍るまでには少し時間がかかりますが、体温を保つことはできません。 - 有害な放射線がダイレクトに降りそそぎます
地球では大気や磁場がバリアとなって守ってくれていますが、防護のない体には強力な宇宙放射線が直接当たり、細胞に深刻なダメージを受けます。
もっと知りたい人への専門的な手がかり
なぜ体液が泡立ってしまうのか、もう少し詳しく調べてみたいときは「アームストロング限界」というキーワードを調べてみてください。
調べてみようキーワード
- アームストロング限界(Armstrong limit):標高約19キロメートル付近(気圧約0.06気圧)を超えると、水が人間の平熱(約37度)で沸騰しはじめる境界線のことです。
- ボイルの法則:温度が一定のとき、気体の体積は圧力に反比例して大きくなるという物理の基本ルールです。息を止めたまま宇宙へ出ると肺が破れてしまう理由が分かります。
- 気圧低下症・減圧症:スキューバダイビングなどでも知られる、急激な気圧の変化によって血液や組織の中に気泡ができてしまう現象です。
宇宙飛行士が着ている白い宇宙服は、たんなる服ではなく「一人乗りの小さな宇宙船」と呼ばれるほど高度な機能が詰まっています。気圧を保ち、酸素を送り、激しい温度変化から体を守る技術についても調べてみると面白い発見がありますよ。
さいごに
地上で私たちが当たり前のように呼吸し、体が形を保っていられるのは、地球の大気と気圧が優しく包んで守ってくれているからです。
おすすめ記事
参照元
- NASA (National Aeronautics and Space Administration) – “Ask an Astrophysicist: Human Body in a Vacuum”https://imagine.gsfc.nasa.gov/features/ask_astrophys/vacuum.html
- NASA Human Research Program – “Space Radiation Risks”https://www.nasa.gov/hrp/radiation/
- FAA (Federal Aviation Administration) – “Physiology of Flight: Decompression Sickness”https://www.faa.gov/pilots/safety/pilotsafetybrochures/media/decompression.pdf

