氷の表面ってなんでこんなに滑るの?

暮らしと科学のハテナ

凍った地面に足を踏み出した瞬間、ツルッと滑ってしりもちをついてしまった……なんて痛い思いをしたことがある人も多いのではないでしょうか。

お家のフローリングや、アスファルトの道ではあんなに派手に滑ることはありません。どうして氷の上だけ、あんなにもツルツルと滑ってしまうのでしょうか?

あなたは確証をもって説明することができますか?

今日は、そんな日々の暮らしの中でふと浮かぶ疑問を、解き明かします。

氷の上はどうしてあんなに滑るの?

秘密は氷の表面にある「見えない水の膜」

私たちが氷の上で滑ってしまう一番の大きな理由は、氷の表面に「目に見えないほど薄い水の膜」ができているからです。

みなさんは、バナナの皮を踏んでツルッと滑るシーンを漫画やテレビで見たことがありませんか?氷の上では、まさにアレと同じことが起きています。氷の表面にある薄い水が、潤滑油(機械などをスムーズに動かすための油)のような働きをして、靴の裏と氷の間を滑りやすくしているのです。

「でも、氷は水が凍ったものだから、表面もカチカチに凍っているはずじゃないの?」と思うかもしれません。

ここが氷の不思議なところです。氷を作っている小さな粒(水分子といいます)は、氷の中の方ではお互いにしっかりと手をつないでカチカチに固まっています。ところが、一番外側(表面)にある粒たちは、外側に手をつなぐ相手がいないため、少しだけ自由に動き回ることができるのです。この自由に動ける部分が、まるで水のように振る舞って私たちを滑らせています。

水の膜で滑る理由!

「でも、水の膜があるとなぜあんなに滑るの?」と疑問に思いますよね。

それは、水が靴と氷の間で物と物がこすれ合う時のブレーキ(摩擦といいます)をなくしてしまうからです。

たとえば、エアホッケーを思い浮かべてください。空気で地面から浮いたホッケーは驚くほどよく滑りますよね!

氷の上にある薄い水の膜でも、これと同じことが起きています。水の膜の中では、先ほどお話しした「少しだけ自由に動き回れる水の粒たち」が、コロコロと動き回っています。私たちが氷の上に立ったとき、靴の裏が直接氷と擦れるのを、この動く水の粒たちが間に入って防いでくれます。

そのおかげで、靴の裏が氷に引っかかってブレーキをかける力がぐんと減ってしまい、足元がツルッと滑ってしまうというわけなのです。水が魔法の潤滑油になって、私たちの足をすべらせていたんですね。

私たちが動くことで氷が溶ける「摩擦熱」

氷が滑るもうひとつの大きな理由は、「摩擦(まさつ)」によって氷が溶けるからです。

私たちが氷の上を歩いたり、スケート靴で勢いよく滑ったりするとき、靴の裏と氷の表面が強くこすれ合います。すると、そこに摩擦熱が生まれて、表面の氷がほんの一瞬だけ溶けて水に変わります。この新しく生まれた水も、滑りやすさをさらにパワーアップさせているのです。

とっても寒い場所では滑りにくい?

実は、氷はどんなときでも滑るわけではありません。マイナス30度を超えるような、とんでもなく寒い場所(たとえば南極など)では、氷はあまり滑らなくなります。

なぜなら、あまりにも冷たすぎると、先ほどお話しした「見えない水の膜」がほとんどなくなってしまい、さらに靴がこすれて摩擦熱が起きても、すぐに冷やされてしまって氷が溶けないからです。氷が滑るためには、ほんの少しの「水」が必要不可欠なんですね。

氷の上でツルッと滑らないための大作戦!

水をはじくパワー「撥水性(はっすいせい)」を使おう

滑ってしまう原因が「氷の表面にあるお水」なら、そのお水をどうにかすれば滑らなくなるはずですよね!そこで大活躍するのが、水をポンッと弾き飛ばす「撥水性」というパワーを持った素材です。

雨の日にさす傘やレインコートを思い浮かべてみてください。雨粒がコロコロと丸くなって転がり落ちていきますよね。あれが撥水性です。

もし、靴の裏にこの水をはじく素材が使われているとどうなるでしょうか?靴の裏が、氷の表面にあるやっかいな水の膜をサッと弾きのけてくれます。すると、靴が水の膜に邪魔されることなく、直接カチカチの氷をギュッとつかむことができるようになります。水という「潤滑油」がなくなるので、滑りにくくなるというわけです。

雪の国で走る車の特別なタイヤ(スタッドレスタイヤ)や、冬用の滑りにくい靴にも、この「水をはじく」科学の力がこっそり使われているんですよ。

もっと知りたい!未来の科学者たちへ

ここまでのお話を聞いて、「もっと詳しく知りたい!」と思った未来の科学者のみなさんへ。ぜひ、以下の言葉を使って、さらに深い世界を調べてみてくださいね。最先端の科学でも研究が続いている、ワクワクするテーマです。

  • 表面溶融(ひょうめんようゆう):0度より低い温度でも、氷の表面が液体のようになっている状態のこと。「疑似液体層(ぎじえきたいそう)」とも呼ばれます。
  • 摩擦熱(まさつねつ):物体同士がこすれ合うことで発生する熱エネルギーのこと。
  • 撥水性(はっすいせい)と親水性(しんすいせい):水をはじく性質と、水と仲良くなりやすい性質のこと。物の表面の作りによって変わります。

これらの言葉で検索すると、大学の先生たちが書いた詳しい解説が見つかるはずです。

まとめ

氷の上で滑ってしまうのは「見えない水の膜」が原因ですが、水をはじく「撥水性」のアイテムを使えば、滑らずに歩くことができます!

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参照元

・公益社団法人 日本雪氷学会(氷や雪の性質に関する研究・情報発信)

URL: https://www.seppyo.org/

・国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)「氷はなぜ滑るのか」に関する物理学の基礎知識

URL: https://www.jst.go.jp/

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