2026年2月2日の市販化(OTC化)開始に伴い、緊急避妊薬(アフターピル)の購入には従来の市販薬とは異なる「厳格な運用ルール」が定められています。
「誰でも、どこでも、すぐに」という利便性を確保しつつも、健康への影響や適正な使用を担保するための仕組みについて、さらに掘り下げて解説します。
1. 購入前に知っておくべき「4つの必須条件」
薬局のレジで直接手渡されるわけではなく、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 本人による来局: パートナー(交際相手)、友人、家族による代理購入は一切認められません。 薬剤師が本人の体調を確認し、その場で服用を確認する必要があるためです。
- 薬剤師による対面販売: 厚生労働省が指定する専門の研修を修了した薬剤師が対面で対応します。登録販売者や研修未受講の薬剤師からは購入できません。
- 店舗の選定: 全国のすべての薬局で買えるわけではありません。「プライバシーへの配慮があるか」「近隣の産婦人科と連携しているか」などの基準をクリアし、厚生労働省のリストに掲載された店舗(全国約7,000店舗)に限られます。
- その場での服用(面前服用): 転売や悪用を防止し、確実に服用したことを確認するため、「薬局内での服用」が原則義務付けられています。 持ち帰って後で飲むことはできません。
2. 薬局での具体的な購入の流れ(ステップ別解説)
薬局に到着してから薬を手にするまでのプロセスは、概ね15分〜30分程度を要します。
ステップ1:取扱店舗の確認と事前連絡
厚生労働省の「緊急避妊薬販売薬局一覧」から近隣の店舗を探します。薬剤師が不在の場合があるため、事前に電話で「緊急避妊薬の在庫があるか」「対応可能な薬剤師がいるか」を確認することが強く推奨されています。
ステップ2:受付とプライバシーの確保
受付で「緊急避妊薬(またはアフターピル)の相談」と伝えると、パーテーションで区切られたカウンターや個室に案内されます。周囲の目を気にせず話せる環境が整えられています。
ステップ3:チェックシート(質問票)への記入
薬剤師から渡される質問票に記入します。主な確認事項は以下の通りです。
- 性交からの経過時間: 72時間以内であるか(72時間を過ぎている場合は効果が著しく下がるため、受診を強く勧められます)。
- 現在の体調・アレルギー: 妊娠の可能性がすでにあるか、授乳中か、併用している薬はあるか。
- 本人確認: 氏名や連絡先のほか、年齢確認(身分証の提示)を求められます。
ステップ4:薬剤師による説明と同意
薬の効果、副作用(吐き気など)、避妊に失敗した可能性がある場合の対処法、そして「3週間後の受診」の重要性について説明を受けます。内容を理解した上で、同意書に署名します。
ステップ5:その場での服用
薬剤師が用意した水(または店舗で購入した水)を使い、その場で1錠を服用します。
3. 年齢に応じた「特別な対応」のルール
2026年の本格実施において、年齢に関わらず「本人の意思」が最優先されますが、年齢層によって薬剤師の対応が細かく規定されています。
| 対象者 | 親の同意の要否 | 薬剤師の対応のポイント |
| 18歳以上(成人) | 不要 | 本人の自己決定に基づき、スムーズに販売。 |
| 16歳〜17歳 | 不要 | 保護者の同意は法的にも不要。本人の意思を確認し、必要に応じて支援を提案。 |
| 16歳未満 | 不要 | 性交同意年齢に関わるため、慎重な聞き取りを実施。虐待や性暴力が疑われる場合は、本人の安全を最優先に「ワンストップ支援センター」等への連絡を検討。 |
【重要】 以前の試験運用では16歳未満に保護者同伴が求められていましたが、2026年2月からは「心理的・経済的な障壁をなくす」という観点から、全年齢で親の同意・同伴は不要となりました。
4. 価格とアフターケア:購入して終わりではない
費用の内訳
- 薬剤費: 7,480円(ノルレボ錠 1.5mg の場合。メーカー希望小売価格)
- 相談料: 店舗によっては、薬剤師による専門的なカウンセリング料が別途加算される場合があります。
「3週間後」のルール
緊急避妊薬を飲んでも、避妊が100%成功するわけではありません。そのため、服用から3週間後に以下のいずれかを行うよう、薬剤師から強く指導されます。
- 産婦人科を受診する: 妊娠の有無を確認し、今後の継続的な避妊(低用量ピル等)について相談する。
- 妊娠検査薬を使用する: 自身で確認し、陽性だった場合は直ちに受診する。
薬局は販売時に、連携している近隣の産婦人科のリストを渡す義務があります。
5. 販売が拒否されるケース
以下のような状況では、薬剤師は販売を行わず、医療機関への直接の受診を案内します。
- 本人以外の来局: どのような理由があっても代理購入は不可です。
- 72時間を大幅に経過している: 薬剤の効果が期待できないため、医師の診察を優先します。
- すでに妊娠している可能性が高い: 最終月経の状況などから判断されます。
- 重度の疾患や併用注意薬: 安全性の観点から医師の判断が必要な場合。
- 面前服用を拒否した場合: ルールに従えない場合は販売できません。
6. まとめ:緊急避妊薬を正しく利用するために
2026年からの市販化ルールは、「アクセスのしやすさ」と「医療上の安全性」のバランスを極めて慎重に取った内容となっています。
利用者が守るべきこと:
- 72時間以内に、本人が、対応薬局へ行く。
- 身分証(健康保険証やマイナンバーカード等)を持参する。
- 薬剤師の前で服用し、3週間後の確認を怠らない。
この新しい制度は、予期せぬ妊娠に直面した際の「時間との戦い」を支える強力なインフラです。正しい手順を理解しておくことで、万が一の際にも落ち着いて行動することが可能になります。

